完璧な発音は必要ない-Englishユーザー、という概念-
そこでIPAという発音ルールブックをもとにして、何が英語を習う日本人にとって問題点なのか段々と分かってきたわけです。またそうした事実とは別に、「発音」について、世間ではもう一つ大きな誤解があり、また自分もそれを信じ込んでいた一人でした。
つまり、英語の発音はネィティブスピーカーに近ければ近いほどいい、という思い込みです。そして何より、英語とはアメリカ人、イギリス人などのネィティブスピーカーと話すことが、英会話だという世間での常識。
これらのことは大いに疑問を持つべきだと気付かされました。
そもそも人間は一番早くに音声習得の機能を失うとされ、生後1年過ぎると、第一言語のアクセントから逃れられません。それなのに、無理に「アメリカ人と同じ発音を。。」などと考えていると、一生その目標を達成できる事もないですし、またそれを達成する意味は、実は何もありません。
というのも、もはや英語は世界言語であり、ネィティブスピーカーと話す事よりも、ノンネィティブスピーカーと話す機会のほうが多いということです。何と現在では世界中で英語を話す人口のうち、80%がノンネィティブスピーカーとされ、アクセント付きの英語での会話が実はスタンダードなのです(Crystal, 2003; Jenkins, 2006)。
バイリンガルな国は世界中にたくさんあり、例えばインドでは120もある言葉を第一言語として使うインド人がコミュニケーションをとるために、公用語の第二言語として「英語」が使われています。その他にも、ビジネスの場で英語が使われていたり(外国語としての英語)、言葉が使われているコンテクスト、そしてその話者のバックグラウンドは多岐にわたります。
実際に、私がアメリカで留学している間、アメリカ人と同様に、多くの留学生と英語で会話する事になりましたし、それだけでなく、アメリカ人の中でも親がヒスパニック系であるため、英語よりスペイン語の方が上手く、英語にはスパニッシュアクセントがある、という人たちもたくさんいました。実情に即して言えば、今や、”English speaker”という概念は古く、”English user”という言葉が生まれているのです(Jenkins, 2006)。